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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

Chapter5-3 プロフェッショナル研究 ~陶酔して行える者が、その道の奥義をつかみとる~

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5-3

汚い手段で勝っても拍手は湧かない。高度なプレーと無心に打ち込む姿が胸を打つのだ。選手(プレーヤー)の熱中と陶酔に、観客も酔いしれる。

これに対してキングは、共感は覚えるが、自分は勝つためのテニスをやると言う。そして――「ことテニスに関する限り、君と俺は住んでる世界がちがうんだ。俺は試合の前になると吐気がするよ。君はどうだ。苺(いちご)クリームなんか食ってるじゃないか。俺は安全を計算してテニスをする。君は気の向くままに好きなことをやる。俺は相手が自分の好きな奴だってことも忘れてしまう。君は相手の本当はありもしないかもしれない良いところを、試合の最中に見付けるんだからな。それに俺は、試合に神経を集中したら、もう観衆のことなんて頭に入らないんだ。ところが君は、どこで誰が見てるかまでちゃんと知ってて、そいつらを思いのままに沸かせるじゃないか。マルカム・サージャントが楽団員を思いのままに操ったとかいう話みたいにさ」
「君はテニスをやってて、楽しくないの?」
「もちろん、テニスは楽しいさ……たいていの場合はね。でも、まさにそこが、君と俺の違うところなんだ。俺は、いつもとは言えないけど、まあ、たいていはテニスを楽しんでいるよ。ところが君は、誰といつどこでやろうと、無条件でテニスに酔っているんだ」
「まあ、見ていろよ」
ツアラプキンは自信をもって言った。
「土曜日には、きっと君を酔わせてみせるから」――(以上、新潮文庫『ウィンブルドン』ラッセル・ブラッドン著、池央耿訳から引用)
プロフェッショナル研究はいつから読書案内になったんだ、と抗議が来そうな今回だが、実をいうと、この最後のやりとりを引用したくてここまで来てしまったのである。
酔うということ。自分のやっている仕事が好きで好きで、それをすることに酔う気持ち、真のプロフェッショナルにはこれがある。
しばらくの間だが私がのぞいたTVの世界、ショービジネスの世界にもこんなプロフェッショナルがいた。出版界にもいた。プロスポーツの世界にもいた。コンピューターのプログラマーやオペレーターにもいた。きっと他の仕事の世界にもいるに決まっている。
だが、プロスポーツやショービジネスの世界に比べて、他の世界にはそういうプロフェッショナルが少ない、少なすぎる。
きっとこれは収入の問題や栄光が得られるかというようなことに関係があるんじゃなかろうか。だとしたら淋しい限りである。
もちろん、収入が多いことは望ましいし、栄光の座にすわるのは悪くない。だが人間、生きてることが面白くなくて何の収入だろう。何の栄光だろう。古い言葉だが、人生の長さは生まれてから死ぬまでの年月で計るものじゃなくて、その間にどれだけ感激したかによって計るものなんだ。そしてその感激は本来、栄冠を得たときや収入を上げたときだけにあるものではなく、毎日の自分の仕事に対してあるべきものなんだ。このことを分かってほしい。前回、前々回から繰り返し、プロフェッショナルには誇りがある、と言っているのは、プロフェッショナルは自分の仕事が好きで、今日もその仕事ができることに感激を持ち、自分がその仕事をする人間であることに誇りがあるという意味なのだ。
十年ほど前だが、阿蘇山の火口で映画のロケをした。ところがそのとき火山活動が活発だというので入山停止になった。我々はそれを無視して入りこみ、撮影しているところを発見され、警察に拘引された。
「爆発で死んだらどうするんだ」
「カツドウ屋が撮影中に死んで、どこが悪いんですか」
警察官は黙って帰してくれた。
監督はプロフェッショナルだった。そしてその警察官もプロフェッショナルの心を知る人であったのである。

 
月刊『自己表現』1982年10月号から原文のまま

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