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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「自分の仕事は、自分のすべてを投入した作品でありたいⅠ」プロフェッショナル研究 Chapter10-1

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人生は短し。芸術は長し。プロの作品は作者の分身と化し、後世の人にまで価値を問う。陶工柿右衛門は、気にいらない作品を全部叩き割った。プロの心が、未熟な作品を許さなかった。
「うちの会社の制作方針を教えてやろうか、第一に早くつくって間に合わすこと、第二が安くつくって予算を守ること、作品の良し悪しなんざ三番目のことさ……」

ある小さなテレビプロダクションでディレクターをしていたころの私が、仲間や助手によく言って笑っていたことである。
お金と時間をたっぷりかければ良いものができるというのは、才能の乏しい者の妄想であって、その証拠に私の会社の中でも腕の良い連中は、私とほとんど変わらぬ条件の中で、けっこう見るに価するものを作っていた。
そのころの私は、否、今の私でもそうなんだが、要するに、才能が乏しくて良いものを作れなかっただけなのである。
毎日毎日忙しく働いて、とりあえず間に合うものを作っていたあのころの私には、このことが全然わかっていなくて、もっと日数があれば、もう少し予算をくれればと不満だらけだったから、あんなことを言っていたのである。今思えば恥ずかしい限りだ。
ところで、ある日いつものようにフィルム編集室でこの話をしていたら、いきなり制作部長が入ってきて「ずいぶん勇ましいことを言ってるな」と言った。驚いた私たちが黙っていると、「テレビの世界は時間の世界だ。どんな大傑作でも放映時間に間に合わなかったらどうなる。明日傑作を放映しますから今日のところは別のチャンネルを見て下さいとでも挨拶を出しとくのか。それにうちは営利会社だ。売り値に従って制作予算は決まっている。百万円で売るものを百五十万円かけてつくってみても、それは作る人間だけが満足するんであって、会社は損害を蒙るだけだ。だがな、だからと言って良いかげんで良いってことはないぞ。そういう条件の中で良いものをつくる。そいつは作る人間の根性だ。その根性のあるヤツは、今に予算も日数もたっぷりある仕事をするようになるんだ」と訓示をたれた。
部長の言うことはたしかに正論だ。間違ってはいない。だが、若かった私はその正しさが面白くない。カチンとくる。そこで私は、「部長、精神訓話はやめてください。ぼくはこの会社に入る前はPLの教師をしていて、精神訓話ならプロフェッショナルです。そんな訓話をしてる時間があったら、少しでも制作予算をとってきてくださいよ」と言い返したもんだ。
次の週、私が制作担当からはずされて、制作デスクと言えばかっこう良いが、要するに会社の電話番に廻されたのも、今思えば当然のことだった。
この場合、周囲の人たちの眼から見ても私のほうが悪いことが明白だったから、誰も同情はしてくれなかった。だが、この稿の読者諸氏の中には、理屈の上では自分のほうが正しいのに、それを口に出したために上役ににらまれて、やりにくい相手や面白くない仕事を廻された人もあるかもしれない。酒の席でぼやけば同情してくれる仲間が何人もあるのに、会社での待遇はちっとも良くならないという人だな。
今はそうでなくとも、今からそういうことになりそうな人もあろう。だから今回の本旨と違うが、少し寄り道をしてこのことついて述べておこう。

つづく

月刊『自己表現』1983年3.4月合併号から原文のまま

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