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コラム
乳幼児編その1「子育ては困って当たり前」
赤ちゃんが生まれて、うれしい、かわいいと思って過ごせるうちはいいのですが、日々、すくすくと育つ我が子を見る喜びばかりではありません。夜泣き、よくぐずる、〈いったいどうしたらいいのよ!〉と思うこともあるでしょう。
今は、インターネットで調べたら、何でも答えが出てくるので、困ったら〝スマホ〟を取り出して、というママも多いかもしれません。
でも、ネットで見て、もっと不安になったことはありませんか。〈もしかしてこんな病気かも〉とか、〈もっと悪くなってしまうんじゃないか〉とか。
調べる、誰かに聞くことが悪いとはいいませんが、まず目の前にいる赤ちゃんをしっかり見てあげてください。
我が子については、ママが一番よく知っている人、スマホやパソコンの画面ではありません。いつもの様子と違うのか、ちょっとご機嫌が悪いだけなのか、ママの頭の中のデータで判断してみて。
いつもの夜泣きなら、必ずいつか終わります。〈困った、どうしよう〉と思って当然。すぐに解決を与えてくれるスマホに頼るのではなくて、自分の頭に、その経験を残していきましょう。
自分がその子のエキスパートになるのです。そのために、困っていいし、悩んでいいし、すぐに解決しなくてもいい。うまくいかなかったことが、次への発見をしてくれます。
いつもニコニコご機嫌で、ぐずらず、おっぱいやミルクもよく飲んでくれて、夜はさっと寝てくれる、なんてロボットじゃああるまいし、そんな人間の赤ちゃんはいません。
困ることは悪いことではないのです。困って当たり前。困って悩んで、それでも目の前の我が子と向き合っていくことに、今からママが慣れていくと、子供が成長するなかで、困って悩んでもへこたれない子になっていきます。そんな思い方で子育てしませんか。
『芸生新聞』2017年3月6日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師