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コラム
思春期編その21「子供に足りない力を育てる」

私の所には「困った状態」でやってくる人がほとんどです。相談を伺うと、「こんなことになるとは思わなかった」「不登校なんて人ごとだと思っていた」「普通にしていたら、普通に育つと思っていました」とよく言われます。
子育てに、困ることや悩むことがあるのは当たり前です。育児というのはインターネットでサクサクと答えを見つけられるようなことではないのです。
困った状態に陥っている親御さんの大体が自分の考えにとらわれていて、どう対応すればいいのか分からなくなっているようです。インターネットに載っているのは一般論で、自分の子育てを分かった上で書いてくれているわけではありません。だから、自分で考えないといけないのです。
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何に気を付け育ててきたのか。子供は何をしてほしいと思っているのか。子供に何の力が足りなくて、どうすればその力が付くのか。そのために自分(親)はどう対応しないといけないのか。
進路や部活でのトラブルといったよくある困り事では済まない悩み事が出てきたら、わが子にはそれを乗り越える力が必要で、その力を付けることを考えた方がいいでしょう。そこから、親がどうしたらいいかが見えてくるのです。
教育機関のお世話になり、他の子供と同じように生活できていたら、嫌なこと、不便なこと、我慢すること、頑張ること、人と協力すること、していいことといけないことの区別ができることなどなど、さまざまな経験をすることができます。
でも、そこに混じってやっていけない状態となれば、それは子供に何かのカが足りなかったからでしょうか。そうだとすれば、付けてやるべき力は何なのでしょうか。それが子供が自立できるようになるために必要な力です。
子供を育てるとは、生きていくために必要なあらゆる力を付けさせていくということです。ペットは卵や赤ちゃんから育てて大きくしても、それは「育てる」とはいわず、「飼育する」です。育てるには、自分や夫婦の在り方も関わってきます。自分に、子供に足りない所を見つけ、子供を育んでいける〝親力〟を磨きましょう。
『芸生新聞』2023年7月3日付掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師