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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「苦しさをのりこえて仕事の中に喜びを②」プロフェッショナル研究 Chapter1-2

ビジネス

映画の中で恋人が死のうが戦争が起ころうが関係ない。
「プロ」は、堅い座席に身を沈め、心の銀幕に展開する明日の戦況を考える。

先日亡くなった水原茂元巨人軍監督の言葉に「畳の上の野球」というものがある。野球の選手、それもプロの選手ともなれば、グランドで一生懸命に練習するのは当然である。チームが合同でする練習もあれば、選手が一人で自分の力を伸ばす練習もある。だがそれだけでは一流の選手になれはしない。彼が一流の選手になるためにはグランドを離れて部屋へ帰り、畳の上にすわってからが大切なのである。そこで何を考え、何をするか、これが水原氏の言う「畳の上の野球」である。
つまり、プロともなれば職場であるグランドを離れた間でさえ、野球の選手として生き、その意識を持っていなければならぬ、ということなのである。
鶴岡泰氏がPL学園野球部の監督だったころ話してくれたことだが、父君一人氏がプロの監督だったとき、大切な試合の前日に彼を映画に誘ってくれたという。その映画は以前から泰氏が見たいと思っていたものだったので喜んでついて行った。映画が終わって出口のところで「面白かったねえ」と声をかけたら一人氏は「え、そうか」とけげんな顔で答えたという。映画がわからなかったのではない。
一人氏は翌日の試合のための策を考えるのに落ちつける場所がほしく、その場所を映画館の中に求めたのだ。「そういえばまるで居眠りしてるように目をつぶってじっとしていたっけ」と泰氏は言っていたが、いうならばこれが水原氏の言う「畳の上の野球」である。
失敗のあとじっくり反省して原因をつきとめ、その対策をつかんだら、さっと何かで遊んで気分を転換し、新しい気持ちで次に向かう。
長嶋茂雄氏や王貞治氏はこれがとてもうまかったという。これも畳の上の野球ということになるだろう。
あるふとん工場の社長であるが、彼の工場は割合に製品の評判もよく業績はまずまずというところであったが、いつも労務管理で問題が起きていた。従業員・正規の社員は少なく大半がパートの女性であったが、彼女らがちょっと勤めて仕事を覚えたかと思うと辞めていくのである。
給料もよそに負けぬほど出しているのにおかしいな、とは思うがさほど効果的な対策もなく、毎日新規募集した人で工場を動かしていた。
この社長があるツアーで北陸の観光旅行に行った。スケジュールの中に輪島塗りの工場見学が含まれていた。輪島塗りは高級な漆器である。
漆が乾かぬうちにほこりがついては困るのでほこりよけにはずいぶん注意し、その機械もあった。清潔な工場を見学しながら社長は自分の会社の工場を思い出していた。何しろ扱っているものがふとんである。綿ほこりが一日中舞っていて作業員の髪は一日で真白に汚れてしまう。
「あれでは女性の従業員が辞めたくなるもの無理はないな」そう思った社長はそこの工場の技術者に相談し、ほこりよけの機械を研究して自分の会社の工場に合うものを作ってもらった。彼の工場は清潔になった。女子従業員も定着してくれるようになった。
観光旅行である。レジャーでありお付き合いである。そんなところでまで仕事のことを考えなくても良いではないか、という人もあるかもしれない。だが、そんなことを思う人はプロフェッショナルとはどういうものかを知らぬ人である。
畳の上の野球はプロ野球の話であって、一般のビジネスに関係ないと思う人は、仕事はとっても苦しいという考えを脱けられぬ人である。

つづく

月刊『自己表現』1982年6月号から原文のまま

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