暮らしを彩る出版社
コラム
プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。
「苦しさをのりこえて仕事の中に喜びを③」プロフェッショナル研究 Chapter1-3
はっきり言って世の中に、働き者と怠け者では怠け者の方が多い。
だけど、怠け者の論理が幅をきかせると、世の中まっ暗闇じゃござんせんか。
仕事には仕事に伴う辛さがある。肉体的にも疲れるし、精神的にもくたびれる。だが、それだけであろうか。
ある女優さんは「朝、お化粧するときに眉が一遍ですっきり引けたときは、何だかその日は良いことがあるような気がするんです」と言っていた。女優にとって美しく装うことは彼女のビジネスの一つである。それがうまくいくことには、他のものでは得られない喜びがある。
自動車修理工なら、自分のなおしたエンジンがスパッとかかって快調に回転しはじめたとき、セールスマンなら、うまく商談がまとまって契約書にハンコをもらうとき、帳簿をつける係なら、きちんと計算が合って終わりの線がきちっと決まったとき、こんなときに人は仕事をするものの喜びを感じる。うまくいったときだけではない。故障したエンジンを検査して、どうやらあそこが悪いらしいと見当をつけ、部品を一つひとつ外していく間に修理工の感じるのは仕事の苦しさだけであろうか。大きな商談になりそうな手ごたえを感じて、まずはその担当者と人間的親近感をと話しかけるとき、その営業部員は給料の安さを思って暗い気持ちばかりだろうか。専門家らしいきちょうめんな字で必要な数字を帳簿に書き込む、そのペン先に神経を集中しているとき、その会計係にあるのは昇進の遅い自分の未来への悲観だけなのだろうか。
何の仕事でも、少なくともそれで収入を得ているなら、それだけの神経を集中し、それだけの技術技量を用い、それだけの努力を費すことが必要である。そして、そうすることは人間を集中させ、他のことなどに気を向ける余裕をなくするものなのである。そこに仕事の持つ喜びの生まれる母胎がある。
仕事はとっても苦しいとか、嫌な仕事はさっさと切り上げて遊びのほうへとかいう感覚で仕事をしていると、まるで牢獄へ入れられたような形になる。
時計ばかりながめて勤務時間が終わるのをひたすら待つだけの人生となる。こうなったらその人はプロではない。プロにあるのは第一にその仕事をすることの喜びである。
プロにとって仕事は辛いばかりではない。辛さをのりこえるだけの喜びがある。だからプロは仕事に納得のいかないときは勤務時間など終わろうが終わるまいが関係なく仕事を続けることもある。
プロとは一年三百六十五日、一日二十四時間プロなのである。
都合のよいとき、やる気の出たときだけやるのはアマチュアである。
レッスンを一日休んだら(休んだことが)自分にわかる。二日休んだら監督にわかる。三日休んだらお客さんにわかってしまう。こう言ったのはフランスのあるプリマドンナである。それでも彼女はバレーの世界から引退しなかった。経済的事情からだったかもしれない。だが、それにも増して彼女を舞台から離さなかったのは、彼女の中にあった踊るよろこび、プロとして働く喜びではなかったろうか。
はっきり言って世の中は、馬鹿と利口では馬鹿の方が多く、働き者と怠け者では怠け者の方が多い。だから怠け者や馬鹿に都合の良いことは実際以上に声高に論じられ主張されるものである。
ヨーロッパやアメリカの労働者が、日本製品の進出で職場を失い、困り果てたあげくに日本人は働きすぎると批判している。お国のオペラ歌手はレッスンせずに舞台へ出るんですか、お国のプロスポーツの選手は遊び半分でゲームに出場しますか、と反問したい。
職業、仕事という言葉に対して日本人の持つ感覚はプロに近い。
こういう言葉に苦痛という感覚しか持たぬ国の労働者は要するにアマチュアであって、少々ハンデをつけても勝敗は明らかである。日本人労働者をアマチュア化しようとするこんな主張に対しては、断固戦わねばならんと思う。
月刊『自己表現』(芸術生活社刊)1982年6月号原文のまま
あなたにお勧めしたい商品
こころに翼を感々学々Ⅲ-生き方のヒントがここにある!-
世の中には、人から「感謝の心を持とう」と言われると、道徳的な問題としか受け取れない人がいます。しかし、感謝の心を持つか持たないかは、その人の幸・不幸に大きなかかわりを持っています。そこで、うるおいのある生活を送りたいあなたに生き方のヒントをお届けします。「人生動き回るべし」「のんきに陽気に淡々と」「人の良さを発見し学ぼう」「いつも真っ白な心で」「チャンスは平等に訪れる」ほか二十編。