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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「たとえ調子がわるくてもベストをつくそうⅢ」プロフェッショナル研究 Chapter2-3

ビジネス

‟社長につなげ”という怪電話。取引先か総会屋か、令夫人か二号さんか、とっさに判断で出来ないようではプロの秘書ではない。

プロの強さのもう一つの要素は正確さである。どんな速球でもコースが甘ければ打たれるように、どんなに早く仕上げても間違いだらけでは仕事をしたことにならない。
時間的に急がねばならないとき、条件的に切迫し小さなミスさえ許されないとき、平常心を失わず、尽くすべき手順を忘れずに尽くすことは難しい。これができるかどうかは実力というより人間力という方が当たっていよう。
仕事のプロには、この人間力が必要な場合がきわめて多い。大事な取引先との面談や、重要会議での発言など、一つ言葉を言い間違えただけで、自分の誠意や能力を疑われ、仕事が失敗するばかりでなく、自分自身のビジネスマンとしての生命まで失うことさえありうる。そのとき正確に間違わずやりおおせれば、信頼される働き手として仕事の幅も質もぐんと向上するものである。
また、正確さの中には判断の正確さも含まれる。何が最重要であるか、何が最も急ぐべき点であるか、今はどうすることが最善か、この判断を誤まるとそれ以後どんなに努力してみても、その仕事そのものが上々の仕上がりになることは難しい。判断にはゆっくり時間をかけ、人の意見を集めた上で下せるものもあるが、多くの場合、とっさの判断、その場ですぐに下さねばならぬもののほうが多い。
「社長と話したい。すぐにつないでくれ」という電話を受けた君が、その社長の秘書であったとして、どういう受け答えをするか。いろいろ条件がある。相手が誰か分かっている場合、分からない場合、社長が電話に出る気持ちのとき、出たくないとき、居るとき居ないとき、そういう状況をとっさに判断し、礼を失さない対応ができなければ、君は秘書失格であり、そうなったらその会社に勤めている限り責任のある仕事はさせてもらえないだろう。
コントロールというのは野球の投手にだけ必要なものではない。野球の投手は投球のコントロールであるが、仕事のプロには自分のコントロール、言葉のコントロール、仕事上の手順のコントロールのほかに、全般を見渡す判断力が必要となる。
こういう意味での正確さ、それは単に気をつけていればできる、というものではない。まず習練。反射神経になるまでの高度な習練のほかに、問題意識が必要となる。全体に対する問題意識、自分自身に対する問題意識、すなわち向上心、そういうものがあって、はじめて、仕事ぶりの正確さ、判断力の正確さが備わってくるのである。
もう一つプロの強さの要素はスタミナ、持続力である。
五分やったら休みたい、一時間たったら休みたい、一仕事すんだら一息つきたい、というのはアマチュアである。プロは必要とあれば何時間でも何日でもやる。
もちろん人間だから、いつも絶好調ではない。だが、たとえ調子が悪くてもやるとなったらベストをつくす。どうせ調子がよくないときだから、と思ってなげやりになるようなことはない。
これはとにかく好きでなければできない。
知人でコンピュータのプログラマーがいたが、この男は本当にプログラミングが好きだった。だから、彼が仕事を始めると周囲の者はもう誰も彼に話しかけたりしないし、終業時間になっても彼のことは放っておいてさっさと退社していた。ときに徹夜になり、ときには翌日まで持ち越すときもあって、朝一番に出社した女子社員が、タバコの煙のかすみの中で一心に仕事をしている彼を発見したことも何回かあったという。
それに彼は、何かの拍子で話がギャンブルの確率やプロ野球選手の成績などに向いたとき、さっそくそれを算出するためのプログラムを考え始め、会話から抜けてしまう。
こいつこそ本物のプロだなと思ったことであった。
プロフェッショナルは何もスポーツや芸能の世界にだけあるのではない。我々の人生もプロの人生であり、強くなければプロじゃないのも共通の原則なのである。

月刊『自己表現』(芸術生活社刊)1982年7月号原文のまま

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筆者の元吉本興業・川崎宗夫氏は吉本興業を退職するまでの36年間、タレントのマネージメントを担当。弱小プロダクションだった吉本興業を陰で支えてきた川崎氏は、当時「日本で一番忙しいマネージャー」と言われました。前半では「人を育てるマネージャー業務」について、その経験談をおもしろおかしく紹介。後半の明石家さんまほか、吉本を代表するタレントが現在の人気を手にするまでのエピソードには、厳しい時代を生き抜くヒントも随所に隠されています。

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虚心坦懐(きょしんたんかい)

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