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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「高い理想を掲げる者が高い誇りを持ちうる③」プロフェッショナル研究 Chapter4-3

ビジネス

状況を読む。次に何をするべきか、自分で判断する。
思いどおりの支持がそこに下されたら、キミの働きは素早く適確なものになるはずだ。

高原は試合中に何度かそういう経験をしたことがあった。なぜか突然頭のなかで何かが閃いて、ここはこれしかないと教えるのだ。するとサードコーチャーの高柳がまさにそのサインを送ってきた。そういうとき、彼の肉体はどんな状況にでも咄嗟に反応できるようになっており、自分に接近してくるものを驚くべき速さでとらえることができた。守っているときでも同じだった。無意識のうちに最良のポジションを発見して、そこに行っていた。一瞬後に作戦はたいてい成功した。だがそういうケースはじつに数少なかった。ほとんどの場合彼はベンチの作戦を待ち、それを体の末端の神経まで行きわたらせるのに時間がかかった。当然のことながらその作戦に応えられる確率は少なくなり、三十パーセントも成功していなかった。バントをするときでさえ失敗の不安を感じ、体が固くなるのが分かった。そういうときに限って、自分が縛られていると感じるのだった。
「それは理想だよ。しかもあまりにも高すぎる理想だ」と高原が言う言葉に読者諸氏も賛成ではないだろうか。しかしこのあと高原は、
「明日市川に話してみよう。おれたちはもっと理想の高い、すごい野球をやろうって」
と言うのである。
個人の才能で勝負する仕事、たとえば作家でも締切はあるし、自分の作品のでき上がりに合わせて展覧会の開ける美術家もないように、現代のビジネスは人間関係を無視して行うことはできない。しかも現代人の多くは会社や団体など何かの組織に属しており、そうなると、結局のところ誰かのサインや命令、指示に従って仕事をするしかないのである。
プロフェッショナルなんて言ったって、何か専門の技術か資格でもあるならともかく、普通の会社に勤めるサラリーマンの私は言われたとおりにするしかないんですからと思う人があれば、ここのところをよく読んでほしい。
プロは自分の誇りのために働くのである。そして誇りを支えるのは理想である。おれはもっと理想の高い、すごい仕事をやるんだ、こう思って自分の仕事ぶりを検討してみれば、自分の仕事ぶりがいかに自分勝手であり、いかに楽をしたがっており、この小説に出てくるドンケツ・エンゼルスの選手たちと同じような不平不満にあふれているかがよく分かるはずである。
それではプロと言えない。このプロフェッショナル研究は単なる研究論文ではない。つまり、いろんなケースを検討してプロとはこうだと結論を出すために書いているのではないということだ。この稿はプロの基本的な条件を調べ、それを読者諸氏に伝えることによって読者諸氏一人ひとりが、それぞれの職場においてプロフェッショナルになることを期待し、その参考として書いているつもりである。ただの読み物ではないのだ。
今回は小説を題材として、監督のサイン通り動くからと言って選手は監督のロボットではなく、試合は選手がするものだということから、組織の中で働く人たちに、指示や命令に従って動く人といえども、仕事は自分がする、そのための考え方、理想というものについて述べたつもりである。理想は高くなければならない。理想の高い者だけが誇りを持ちうるのであり、理想に向かう努力を続ける意志力を持ちうるものであるからである。

月刊『自己表現』1982年9月号から原文のまま

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