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コラム
プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。
「自分を捨てた人が失敗からも立ち上がるⅠ」プロフェッショナル研究 Chapter8-1
ヘマをした。あわてる。もっとひどいヘマをする。
キミなら、この連鎖を断ち切れるだろうか……。
失敗がキミの真価を問う。カッコ悪さにうろたえると、些細なキズも致命傷に広がる。
あの翌年に生まれた長男がもう高校二年生、十七歳になっているんだから、十七年も前のことだったんだ。
昭和三十九年の十月十日、東京でオリンピックの開会式があったんだよ。
その日の東京は文字通りの日本晴れ、雲一つなく晴れ上がっていた。
ファンファーレや入場行進やブランデージ会長の挨拶や何かが終わって、式典のクライマックス聖火の入場になった。
最終ランナーが炬火を持って場内を一周し聖火台に駆け上がり、こっちを向いてすっくと立つ。いよいよ点火だ。
満場の大歓声とともに聖火が燃え上がった。そのとき西の空から大歓声を圧するほどの轟音がして五機のジェット機が飛来し、雲一つない青い空に白黒赤青黄の五色の円を描いてみせた。
大空に描く鮮やかな五輪のマーク。
航空自衛隊の誇るアクロバット飛行チーム、ブルーインパルス颯爽の登場だった。
ほんと、カッコよかった。感動的だった。
もちろんブルーインパルスはその前からあった。
そういうチームがあることは聞いていた。
でも、そのころ東京に住んでいた日本人の多くは、彼らの演技を見たのは初めてじゃなかったろうか。
アメリカ空軍にも同じようなチームがあり、何かのときにその妙技を見せつけられて、何て言うのかな、日米両国の差とでも言うか、どうもそういう面で日本は劣っているのかなと思う気持ちがあった。
それが、オリンピックの開会式という、これ以上は考えられないような舞台で、颯爽たるところを見せてくれたんだから、単に演出として効果的という以上の喜びを感じさせてくれたもんだ。
ブルーインパルス。
おそらく一万人ぐらいはいるだろう航空自衛隊のジェットパイロットの中から、選り抜かれた腕ききの戦闘機乗りたち。疑いもなく最高のプロフェッショナル集団だ。
素質は優秀だろうし、技術は抜群だろうし、訓練は厳格だろうし、日常生活の節制も、そこらあたりにごろごろしているふやけた若い連中なんぞ、聞いただけで逃げだすほど厳しいものに違いない。
そんな連中が大事なところでへまをやるなんて信じられない。
ところがだ、昨日の新聞によればブルーインパルスの一機が、公開飛行中に墜落し、それが住宅地に落ちたもんだから、十何人かの被害者まで出しちまったというんだよ。
まあ誰にだって失敗はある。
このパイロットは一度の失敗が自分と他の何人もの人を傷つけたのだから、とりかえしはつかないわけだが、大体において、とりかえしのつかないような結果になるまでには一つでなく二重三重のへまがあるものなんだ。
つづく
月刊『自己表現』1983年1月号から原文のまま
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