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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「自分を捨てた人が失敗からも立ち上がるⅡ」プロフェッショナル研究 Chapter8-2

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片平の本塁打は仕方がない。しかし、次のテリーへの不用意な初球。
あれが悔やんでも悔やみきれない一球となってしまった。

 

落ちたパイロットは優秀な飛行士だ。彼が最後の降下に入ったとき、何も分からぬまま地面へ突っ込んだとは思えない。たとえば角度が深すぎるとか、降下速度が早すぎるとか、気はついていたと思う。
そこで彼が適切な処置をとっていれば大惨事だけはまぬがれたんじゃないかなと思える。
もっともマッハ1.6の超音速機のことだから、適切な処置と言ってもとっさにやらなければならないし、たとえば墜落をまぬがれようと機首を上げたりすれば、みごとなフィギュアを乱すことになるだろうから、彼ががまんした、それもほんの一秒かそこら、ということは充分想像できる。
そしてそれが惨事を招いた。あとで評価すれば「なんであんな馬鹿なことを」ということになるかもしれないが、二重三重のへまというのは、本人がまじめにやればやるほど出てきやすいもんだ。
彼は思わぬ急速度の降下のため失神していたのかもしれない。
失神はしないまでも一種の放心状態になっていたのかもしれない。ブルーインパルスの一員ともあろうパイロットが、安全なつもりで飛んでいたら落ちちゃったなんてことはありえない。
昨日今日飛ぶことを覚えたひよことはわけがちがうんだ。
失敗して、それに気づいたときたいていの人はあわてる。あわてるあまり一種の放心状態になることは多い。その結果失敗の上塗りをするんだ。
かなりのプロフェッショナルでもそうなる人は多い。
西武対中日の日本シリーズ(注)で目についたのをあげれば、不用意に投げた内角速球を田渕にヒットされ、リズムを崩して前半で大量失点してシリーズの流れを悪くした第一戦の小松。打球の読みを間違って態勢を崩してやっと止めた球を、刺せる見込みもないのに一塁へ悪投して大逆転される因になった第三戦の石毛。谷沢にホームランされたあと連打を食って敗戦を決定づけた第四戦の小林。
最終戦でも片平の一発だけに止めておけば反撃のチャンスもあったものを、続くテリーにまで打たれた鈴木。
いずれも、いつもの彼らならしないようなへまを大事なときにやらかして、とりかえしのつかない結果を招いている。
何であいつがあんな馬鹿なことを、と本来の彼を知る者がひとしく驚き呆れるような失敗である。
野球を見ているとよく分かるが、四球とエラーは失点に結びつくケースが多い。
これはへまをやるとあわててへまの上塗りをすることが多いという今回のテーマの傍証になる。
どんな名手にもエラーはある。どんなに注意深い人も失敗が皆無ではない。
その人が真にプロフェッショナルと呼ぶにふさわしいかどうかは、一つの失敗のあとをどう処理するかという点に現れる。
ここで知っておかねばならぬ点は、失敗の処理はカッコ悪いものだということである。
三遊間のゴロをやっと止める、だが走者の足が早くて投げても間に合わない、そういうときは投げないのが適当な処置である。
これはあまりカッコよくない。かなわぬまでも一応は投げてみるほうが良いように思える。そこで投げたのが大悪投となれば、投げないよりもっとカッコ悪いことになる。
あのブルーインパルスのパイロットも、フィギュアを乱すカッコ悪さに甘んじれば死ぬことはなかったかもしれない。
山で道を間違えたときは、分かるところまで戻ってあらためてコースを調べるのが良いとされている。
これは別にカッコ良いとか悪いじゃなく、無駄足をふむことになるから、山に詳しくない人は、もっと効率的にコースへ戻る道があるはず、などと考えてますますわけの分からない道に迷いこむと言う。

つづく

月刊『自己表現』1983年1月号から原文のまま

(注)プロ野球のセントラルリーグとパシフィックリーグそれぞれの優勝チームが対戦して日本一を決めるシリーズ最後の試合。正式名称はプロ野球日本選手権シリーズ。主催は一般社団法人日本野球機構。

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