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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「癖を是正して進歩を目指す自分となっているだろうか」プロフェッショナル研究 Chapter11-3

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去年の自分と今年の自分、三年前の自分と現在の自分を比較してみて、
どこかに進歩を感じれるようになっているだろうか。

プロは常に進歩してなきゃならない。
江川が去年と同じ投球をすれば二十勝どころか十勝も危いだろう。
加藤名人が去年と同じ将棋を指していれば、名人位は守りきれないだろう。
相手は研究し、変化し、進歩して来る。
こちらが同じレベルでいれば相対的に劣ることになる。
これがプロの世界なのだ。
だからプロには目標が必要になる。
去年三冠王をとった落合選手は
「今年は四割打者を狙う、そしたら年俸一億円にしてもらえる」と言った。
長い日本のプロ野球史の中には、
強打者猛打者好打者が何十人も何百人もいたが、
四割打者というのは一人も出ていない。
長嶋が全盛期に六月か七月ごろまで四割八分ぐらい打っていて、
ナガシマ・ジャイアンツなんて言われた年があったが、
それでもシーズンが終わってみたらやっぱり四割は打てなかった。
張本も三割八分ぐらいで、
何とか四割を打たせたいと応援していたけど、
駄目だった。
という具合だから、落合が四割打者になれる可能性は少ないと思う。
だが彼は自分でそれを宣言し、それに向かって努力し始めた。
これが本当のプロである。
目標を持って努力する。
それもかなりの実績のある人が。
そういう本当のプロがいなければその世界全体に進歩がなくなってしまう。
もちろん原や中畑みたいにタイトルを取ってもいない選手が
目標を掲げて努力するのは当然のことである。
目標を立てれば、今までそれができなかったのは
何故かという疑問が生じる。その疑問に対する答を発見し、
今度はその答を自分のものにするべく自らを鍛えるのである。
その答には二種類あろう。
つまり変化する場合と進歩する場合である。
ジェフリー・アーチャーという作家がいる。
彼の小説はみんな面白い。
最初の「百万ドルを取り返せ」はサギ師をペテンにかける話。
次の「大統領に知らせますか?」は暗殺を防ぐ
フレデリック・フォーサイスばりのサスペンス。
番目の「ケインとアベル」はそれまでと全く別の成功物語。
次の「ロスノフスキ家の娘」は「ケインとアベル」の続篇である。
このように次々変化するやり方と、

同じ傾向ながらちょっとずつ趣向を変えて行く、
司馬遼太郎氏のように歴史上の人物に的をしぼって、
しかも次々と魅力たっぷりに描き出すやり方とがある。
「菜の花の沖」も面白かったが、
いま新聞に連載している「箱根の坂」はもっと面白い。
司馬氏ほどの大家が今でも進歩しているわけである。
常に新しいものを求め、自らを鍛えている本物のプロフェッショナルである。
鍛えると言っても未熟なうちは、

自分の長所を発見して育てるほうが先になろう。
だがある程度実力がつけば、そっちはもうあまり期待できなくなる。
小松辰雄の球があれ以上速くなることはあてにできない。
それからは自分の弱点、
癖とか傾向とかを是正することのほうが実効的である。
今までになかった何かを出す、
今までは、あっても仕方がないと思われていたものをなくす。
江川ならときどき思いがけないホームランを食らう癖をなくす。
田淵なら長打だけでなく軽くライトへも打つうまさを出す。
落合が四割打つには、さっぱり打てない日がある癖をなくす、
というようなものである。
プロフェッショナルとは常に進歩のある人でなければならない。

昨日の自分と今日の自分でははっきりしないかもしれない。
だが、去年の自分と今年の自分、
三年前の自分と現在の自分を比較してみて、
何にも進歩を感じないのであれば、
プロフェッショナルとして生きているとは言えない自分なのである。

月刊『自己表現』1983年5月号から原文のまま

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