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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「ピンチを切り抜ける力はどこに」プロフェッショナル研究 Chapter13-2

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いくら考えても、過ぎ去った事をやり直すことはできない。悔やむより次にすべきことは二度と失敗しないようにすることだけだ。

プロフェッショナル研究は遂にネタ切れになってスポーツ評論になったのか、
と文句がきそうな話を続けたが、話の中心は重信である。
十五番でツーパットを確実に入れていたらという、たらの話である。
勝負にたらはないとか、たらは北海道とか言って、
そういう考え方をいましめてはいるが、
負けた者にとってはそんなことを考えて自らをなぐさめることも
精神衛生上必要なのかもしれない。

高木彬光氏の『連合艦隊遂に勝つ』は面白い小説だが、
壮大なたらの話である。
太平洋を舞台にアメリカ海軍と大日本帝国連合艦隊が戦ったあの第二次世界大戦を、
あとになってつぶさに検討してみると、
日本側にも勝つチャンスが少なくとも三回はあったという意見があって、
それがもしそうなっていたら、
という設定で大海戦史を再編成した物語なのだが、
結局のところは国力というか産業力の差があらわれて
日本が敗れるという筋になっている。

人気アニメとなった『宇宙戦艦ヤマト』にしても、
戦争を知らない子供たちはともかく、
大和という日本海軍の持っていた世界最大の戦艦に対する郷愁というか、
あいつがもっと活躍してくれていたら、
というたらの気持ちが働いて、
あのアニメを愛した大人は多かったことと思う。

たらが精神衛生上役立つのは、
すべてが終わってしまってからである。
たとえば重信選手が、今になってから
「あの十五番のパットをもう少しきちっと打っていたら、最後のバーディで勝てていた」
と言うのなら、彼に親しい人はうなづくだろうし、認めてもくれる。
少なくとも「俺はもう勝てない」
と落ちこむよりはずっと良い。

だが、まだ終わってもいないうちに、
まだやることが残っているうちに、
それを考えたりくやんだりしているのは、
現在しなければならないことに対して精神の集中力を失うことになり、
ますますまずいことになりかねない。

どまん中のストライクをうっかり見送った打者が、
「しまった、あれを打っとくんだった」といつまでも考えていたら、
次の球を打ちそこなう。いくら考えても、
さっきの球をもう一回やりなおすことはできない。
彼にできるのは、次の球に集中して、
今度は打ちそこなわないようにすることだけなのである。

プロフェッショナルの値打ちは、
長い間やってみてあらわれると言う。

十五日のゴルフでも優勝したあとのインタビューで、
「一番二番と立ち上がりの二ホールをとられたとき」
『まだ先は長いよ』と何回も言っていましたね」という質問に対して、
中島が「そうでも思わなきゃやっていられませんよ」
と答えていたが、中島にしてもあのとき
「しまったと思うショットがあったはずである。
「ツイてないなあ」と思う場面もあったはずである。
もしそのあと中島が「あそこであれが……」と思っていたら、
あのものすごいリカバリーショットは出なかったろうし、
優勝もなかったろう。

「たら」や「れば」を振り捨てて、今の、
現在の為(な)すべきことに神経を集中する。
この精神のスタミナがプロフェッショナルの値打ちなのである。

 

つづく

月刊『自己表現』1983年7月号から原文のまま

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