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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「ピンチを切り抜ける力はどこに」プロフェッショナル研究 Chapter13-3

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いわゆる人生の敗者、人生が充実していない人に限って、
「たら」や「れば」が多いのは事実である。それは精神の集中に欠けているからだ。

五月十二日現在で谷川浩司八段は加藤名人に三連勝、
二十一歳の将棋名人誕生の可能性大である。
中原が十代でA級に進み、当時天下無敵だった大山名人に棋聖戦で挑戦し、
タイトルを奪取したころ「鉄腕アトム」というニックネームがつけられた。
あのころの人気アニメの主人公、
可愛らしい顔をしていて滅法強いところがイメージとして一致していたためである。
してみると谷川にはアラレちゃんとでもつけることになるが、
でもアラレちゃんと谷川ではまるでイメージが合わない。
それはともかく、三連勝したといっても加藤名人に対して
谷川が最善手ばかり指したわけではないと思う。
指し手を読んでいるうちに、たとえば「この歩がついてあれば」とか、
「飛車が一つ寄っていたら」などと思うような局面もあったはずである。
だが谷川はそんなことにとらわれず、
その局面での最善手を求めて指し手を読んだ。
でなければ最高位者の名人に三連勝なんてできるはずがない。

勝負の最中に「たら」や「れば」を思うのはエネルギーの無駄遣いであり、
集中力の邪魔でしかない。
そんなとき「たら」や「れば」にとらわれていては
敗者となるしかないのだ。
人生を勝負というには問題があるが、
それでも人生には人生の勝者と敗者があることは事実である。
実力があって幸せな者、実力もないのに幸せをつかむ者、
実力があるのに不遇な者、実力もなく幸せでもない者、
その中間にいろいろあろうが、とにかく人生にも勝者と敗者、
そういう表現が不適当なら、人生が充実している人と、
そうでない人がある。

そして、いわゆる人生の敗者、
人生が充実していない人に限って
「たら」や「れば」が多いことも統計的事実である。
「もしもあの大学に合格していれば」
「もしあのとき東京に出るのを親が許してくれていたら」
「もう少し頭がよく生まれついていたら」こんな人生にはなっていなかった、
と言う人が多いことにはあきれるばかりである。
彼らが本気でそんなことを考え、そう言っているのなら、
彼らの人生が充実することもなく、
彼らの人生が幸せなものになることもありえない。
なぜなら、そんなことを考えている間はその人は目前の
自分の為すべきことに精神を集中することはできないからである。

長い人生の間には悔やまれることも起こる。
不運だとしか思えぬようなことも起こる。
そういうことがなかったなら、苦労は少なかったかもしれない、
今よりももう少し有利な形で人生に向かえたかもしれない。
だが、そんなことは今さら言ってみてもしかたのないことなのだ。
そんなことを考えているより、今すること、
していることに真剣に向かうべきなのである。
条件というのはだれにもある。
アメリカに生まれていればもっと自由に英語が話せたのにと言ってみても仕方がない。
日本に生まれたという条件で、英語の練習をするのがその人の人生なのだから。
プロフェッショナルに「たら」や「れば」はない。
なぜならそいつはプロフェッショナルに不可欠の集中力を削ぐからなのである。

 

月刊『自己表現』1983年7月号から原文のまま

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