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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「鍛えた者はいさぎよし!」プロフェッショナル研究 Chapter15-1

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もっともらしい言い訳で責任逃れをするのは、真の実力がないからだ。

北海道士別市の産院で、ストーブの消し忘れから、
生まれたばかりの赤ちゃん三人が、熱射病を起こして死んでしまう事件があった。
ひとりで当直をしていた無資格の看護補助者が、業務上過失致死の容疑で逮捕された。
彼女の立場は他人事ではないと思える人もあろう。

働いている定時制の人や、アルバイトしている人は、深刻かも。
他山の石として考えてみたい。
報道されたように、彼女は新生児室を22℃ぐらいに、
と院長の指示を受けていた。
午前二時ごろ、授乳のとき10℃以下だったので、ストーブをつけた。
だが、ストーブを消すのを忘れて、他の用事をしたあと眠ってしまったらしい。
しかし彼女は、前日の午前九時から働きづめで、そのまま当直。
当夜も出産介助などで忙しかったようだ。
くたくたに疲れていたと推測できる。
定められた事務を眠い目で済ませ、許されている仮眠に戻るとき、
ストーブのことを失念したとしても、人情としては責められない気もするだろう。
また、彼女は産院に雇われ、院長の指示で働いていたのだから、
何かあったら院長が責任をとるべきだと、漠然と考えている人もいるかもしれない。
だが、世の中は厳しい。すでに彼女だけが逮捕された。

働いていれば、職業につく能力があるということから(例えばアルバイトでも)、
一人前だとみなされる。仕事の上での不手際が、
患者なり客なりの第三者に影響すれば、
自覚していなくとも「責任をとらされる」のだ。
上司の医師が、この注射をあの患者に、と指示した。
看護婦は、ちょっと変だと思ったが、指示されたからと実行した。
注射薬や患者名などが間違っていて、
患者が死んでしまった――こんなときどちらが罪に問われるかを、
辻正美京大助教授らが調べた。

双方有罪が二件のほか、医師のみ有罪が二件、
補助者のみ有罪が六件だったという(「ジュリスト」716号)。
責任を問われる際は、指示した側よりも、
実行した側に厳しくなることが、わかるだろう。
今回の事件は、おまけにストーブの消し忘れという明らかな過失が加わるから、
ますます不利だ。

看護婦たちに聞くと、日勤に続いて夜勤する当直制では、
責任をもった仕事ができないという。
大病院では、三交代制が普通という。
とすると、この看護補助者の場合、ストーブ消し忘れという事件を引き起こす前に、
「当直では疲れるし、眠い。事故が起こるのが心配」と、
院長に相談して、交代制などの防止策を施す義務があった――と、
西原春夫早大学長(刑法)は指摘する。

上司の指示を素直に聞くだけでは、
職業人としての自分の責任は果たせない。
最悪の場合、客や患者にどんな悪影響が及ぶかを考えて、
その防止に、上司と相談しながら、
最善を尽くすことまで、働く人には要求されるのだ。

つづく
月刊『自己表現』1983年9月号から原文のまま

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