コラム

  • TOP
  • コラム
  • 「物を見抜くコツを養おう」プロフェッショナル研究 Chapter16-2
プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「物を見抜くコツを養おう」プロフェッショナル研究 Chapter16-2

ビジネス
16-2

ただ漫然と見、聞き、するだけでは何も身につかない。
いつも真剣にしてこそ、自然に必要なものが身につくようになるのだ。

アマチュアは漫然と見る、当然である。
彼には別に責任もない、楽しみで見ているだけだから。
見るだけでなく、言うも、聞くも、するも、アマチュアは漫然とし、プロは真剣にする。
だから磨かれる。神経を集中するまでもなく見えてしまう、
聞こえてしまう、できてしまう。

これも昔の話。ある先輩、この人は熟練した医師であったが、
彼と一緒に芝居を見に行った。ある一人の役者が出た。
その役者は前から私のひいきの役者であったから、
私は大いに喜んで彼の好演に拍手を送った。
劇場を出てから、その先輩は
「おい井上君、あの役者はもう長くないよ」と言った。
「えっ」、驚いた私は「なんでそれがわかるんですか」と質問した。
「さっき、退場するとき、彼はこんなしぐさをした。
どこがどうというんじゃないけど、あれを見て、
彼がボケはじめたことがわかったんだよ」
「そんな、ちょっとそんなしぐさを見たぐらいでわかるはずないですよ、
もっと精密に検査でもしてみなけりゃ」
「だから誰にも言うなと言ったろ。
でも検査なんて確認をとるためにしか役立ちゃしない。
俺は今まで何人も老いてボケた人をみているからわかるんだ」
「へーえ」と感心したきりその先輩と別れて帰ったが、
それから一年もたたぬうちに彼は休演し、
それ以後は舞台に出て来ていない。
先輩のプロの眼の鋭さは本当だったのだ。

富士スピードウエイでも鈴鹿サーキットでも、
一流選手がレースをやると、大体同じコースに車のあとがつく。
いわゆる経済コース、ギヤチェンジの都合やカーブでの減速具合などから言って、
最高の状態で走り抜けるコースというのは、
どのサーキットにも一つだけあって、
それが経済コースと呼ばれているわけだが、
それを一周か二周でつかんでしまい、
正確にそのコースを走っている。
どう通ってみても一周で0.1秒も違わないだろうに、
きちっと経済コースを見つけて走る。
これがプロフェッショナルの眼、鋭い眼なのである。
これだって、いちいち神経を使って調べてるわけじゃあるまい。
走っているうちに自然にそのコースをとることになってしまうのだと思う。

少なくともプロフェッショナルと呼ばれるには、
このような鋭い眼を持たなければならない。
打者に投げるときと一塁へ投げるとき、
ストレートのときとカーブのとき、どの投手も完全に同じではない。
だが、漫然と見ているアマチュアには、別段変わったところはないように見える。
だが、プロの鋭い眼はその小さな違いを見落とさない。
それまで調子のよかった投手がある時期から打ち込まれるのは、
その小さな違いを見抜かれたせいであることは多い。
経理の専門家の中には、帳簿をさっと一わたり眺めただけで、
どこがおかしいか見抜く人があるという。
プロフェッショナルである。

こういう鋭い眼は、視力表の1.5とか1.0とかとは関係ない。
こちらのほうは生まれつきがほとんどであるが、
プロの眼は決して生まれながらのものでなく、
磨き抜かれ、鍛え抜かれてできるものである。

つづく

 

  • 文中に現代においては不適切とされる表現がございますが、時代背景ならびに作者の
  • 意図を尊重し、そのまま表記しています。ご了承ください。

月刊『自己表現』1983年10月号から原文のまま

あなたにお勧めしたい商品
魔法のバトン(帯有)

魔法のバトン -バトントワラー稲垣正司は冒険する-

自分の生きていく道は自分で切り開け!
日本で、アメリカで、世界的なサーカス集団の中で、
男子バトン界のパイオニア・稲垣正司は冒険する。
バトンへの「熱さ」、プライベートの「ユルさ」
そして「素の顔」がわかるQ&A。
本編はプロバトントワラーとしての日々を描く「仕事編」と、
世界大会出場や指導者としての体験を語る「活動編」を収録。
帯にはコピーライターの糸井重里氏のメッセージ
「そして、この本というバトンを誰かが手にとる。運命だね」。

カテゴリー

本日のカレンダー

12月
14

幸せを呼び込む人になろう