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プロとアマチュアの違いは何か…。 自分の仕事に誇りを持ち、より充実した生活を送るためのヒントが満載。きっと誰もが今からでも変われます!本当の「自分」を発見し、マンネリズムから脱出しよう。 1982年(昭和57年)から1984年(昭和59年)までに連載された、芸術生活社発行『自己表現』の「プロフェッショナル研究」を原文のままお届けします。

「透視する眼力を養え」プロフェッショナル研究 Chapter20-1

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一見何の変哲もないところに芸術の素材を見つけ出す。
それがプロの眼だ。

冬だ、ラグビーのシーズンだ。
でも今年はワセダが弱くて正月の大会に出て来られない。
ワセダのいない正月ラグビーなんて、というわけでいささか退屈である。
もっともこの稿はプロフェッショナル研究、ラグビーにプロはないから、
どんな大試合も名プレーも、この稿に登場させるのは無理だ。

こういう退屈なときには本を読むのが良い。
そこで今月は、

読むだけでプロフェッショナルとはどういうものかわかる本を紹介しよう。
それは近藤唯之氏の『比較野球選手論』である。
面白い、参考になる、血が騒ぐ本だ。
とくに気にいった部分がある。

―広岡達朗遊撃手が、どれほど理性的な守備をやってのけたか。
ここに次のような守備資料がある。
広岡は昭和29年から39年までの11年間、
ずっとレギュラー生活を送った。
そして、この11年間に1213試合に出場、
227失策を記録しているから、失策率は5.3試合に1個の割合である。
それなら、いつでもどこでも広岡と対比させられた
吉田義男遊撃手の失策率はどのくらいだったのか。
たとえば吉田は28年から39年までの12年間に1481試合に出場、
288個の失策をしているから、失策率は5.1試合に1個となっている。
「広岡の失策率は5.3試合に1個、
吉田のそれは5.1試合に1個、
それなら0.2試合分だけ広岡の勝ち」
理屈から言えばそうなる。
しかし広岡と吉田の失策率を調査していくうち、実は奇妙な現象にぶつかった。

私はこの奇妙な現象に、名遊撃手にもこういう差があったのかと、
うなる思いだった。たとえば吉田の場合はこうだ。
2試合連続失策が57回、中1試合おいての失策が46回、
中2試合が33回、つまり吉田は一度失策を始めると、
まとめてやる傾向が数字にはっきり出ている。

それなら広岡はどうなのか。
2試合連続失策が25回、中1試合失策が28回、
中2試合失策が17回。吉田と比べていただきたい。
一度失策をしたからといって、
吉田のように崩れないシンの強さが広岡にはあった。
だが別の角度から見ると、もうひとつ、広岡と吉田は違っていた。

吉田は16試合以上、無失策をつづけた場合が9回もあった。
ところが広岡はこれが6回しかない。これはいったいどう解釈したらいいのか。
吉田は一度のると、のりにのって16試合以上無失策を9回以上もやってのける。
だが、いったん崩れ出すと自分でも押さえられなくて、まとめて失策をくりかえす。

広岡は違う、吉田のようにのりにのるというのがない。
のりまくって自分で酔いしれるというところがない。
どこかでシーンと、いつも目覚めている。
だから一度失敗しても、崩れ落ちるという危険性がない。

吉田が“名人肌・左甚五郎”なら、
広岡は、“理性派遊撃手”といっていい。
遊撃というポジションから見たとき、どちらが最適なのか、
どちらがお客を感動させるか。
それは読者ひとりひとりに聞くより手がない――。

つづく

月刊『自己表現』1984年1月号から原文のまま

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