暮らしを彩る出版社
コラム
未就学児編その3「叱り方に気を付けて」
親子コミュニケーション
前項では、していいこと、いけないことが分かっていない時期に怒ってはいけないと言いました。
では、もう少し大きくなって、してはいけないことを分かってしたことなら、叱ってもいいのでしょうか。
叱り方もいろいろあります。最も気を付けないといけないのは、〝たたくこと〟です。していいこと、いけないことが分からないうちは、当然、たたくことはありえません。
してはいけないと以前言ったのに、また、やってしまったことについてはどうでしょう。コップのミルクをわざとこぼしたら? お友達のおもちゃを無理やり取ったら? それなら、痛い思いをして、たたいてでもやめさせるべきことですか? 答えはNOです。
時々、「ダメじゃない」と手の甲や頭をペチッとたたく親を見ることがありますが、これはしてはいけません。そうすると、他の子が何か気に入らないことをした時に、たたいてやめさせようとするようになります。親が、いけないことをしたらたたいてもいいんだよ、ということを教えていることになるからです。
ペチッと痛くない程度にたたくのと、バチン! と痛いほどたたく違いは子供には分かりません。小さいうちは加減することができないのですから、自分が気に入らないことがあるとたたく子供になります。
ただ、これだけは絶対にしてはいけないことをした時に限っては別です。それは、熱いストーブを触ろうとしたとか、交通量の激しい車道に飛び出ようとしたとか、車が走る道路に誰かを押そうとしたなど、身体や命の危険がある時だけです。
そうすると、多くて1年に一度、せいぜい2、3年に一度あるか無いか程度でしょう。愛のムチという名で、親の怒りのはけ口にしてはいけません。
『芸生新聞』2017年12月4日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師