暮らしを彩る出版社
コラム
未就学児編その7「心の中の心配不安症を打ち捨てる」
3、4歳になり、保育所・幼稚園に行くことになった時に、初めて親離れ子離れすることになります。
それまで、実家に預けたり、ママ友に頼んだりはあったとしても、毎日、決まった時間に離れないといけなくなるのは、ママによっては、〈つらくて心配〉と思う人もいるでしょう。子供も、初めてこんなに長い時間ママと離れるのですから、泣いたり、ぐずったりするのは当たり前です。
人は一人では生きていけません。皆が、どこかの社会に属して生きているのです。その最初の入り口の社会と出合う場が、園になります。その初めての門出に向かうのに、ママが心配な気持ちばかりでは、子供をどこか不安な気持ちにさせてしまいます。
〈心配だわ、だいじょうぶかな?〉
何が心配なのですか? お友達ができるかな、泣かないかな、いじめられないかな、おもらししないかな……。それらを心配したからといって、何か変わりますか? 他の園に変えたら、その不安は無くなるのですか? そもそも、それは「心配」なことですか?
園で、他の子と仲良くできるかとか、意地悪な子がいたらとか、そんなことはどこに行っても通る道です。泣くこと、怒ること、いやな思いをすること無しに、園での生活(つまりこれからの人生)がある訳ないのです。それらは、心配なことではなくて、経験しないといけないことなのです。
その代わり、うれしいこと、楽しい出会い、ワクワクすることもたくさんあります。あらゆる思いを経験することで、子供は成長して、生きていく力を付けていくのです。
この程度の「心配・不安」は、実は〈いろんなことがあるだろうから、挑戦していこうね、ママも応援してるよ〉 と、言い換えられることなのです。
ママの心の中の「心配不安症」の亡霊を打ち捨て、親は親の目の前のすべきことをしましょう。朝の登園で、大泣きしたとしても、「ママが見えなくなったら、機嫌良く遊んでますよ」と言われたら、気にすることはありません。それが、強い子にさせる入り口です。
『芸生新聞』2018年5月14日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師