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コラム
未就学児編その8「自立させるための子育てである」
親子コミュニケーション

私はときどき、幼稚園の保護者に向けた講演を依頼されるのですが、その時に、お母さんたちに問いかけることがあります。
「どんな子供になってほしいですか?」
そうすると、いろんな答えが返ってきます。優しい子、強い子、元気な子、思いやりのある子、周りに迷惑を掛けないように……、素直に……、などなど。
そこで、もう一度、聞きます。
「それが子育てのゴールで、そんな子供になれば〝成功〟ですか?」
子育ての目標は何でしょう。まだ、子供が小さいうちは、優しく強く素直な……と、性格についての形容詞が出てきますが、学校に上がると、努力する子、いやなことから逃げない、などと、勉強に関することが気になってきます。
親ですから、〈子供が心身ともに健全に、あらゆる成長をしてほしい〉と思うのは当然です。
では、優しくて、親の手伝いをいやがらずにしてくれて、素直で、自分の好きな勉強を続けていれば、30歳になって仕事をしていなくてもいいですか?
それは困りますよね。親の子育ての最終目標は、「自立」なのです。自分で考え、判断し、困難にも負けずに、自分や家族を食べさせていけるようになる、更には社会の役に立つ人になることです。それを忘れてはいけません。
いつか、親から離れて社会に出て、自分で生活できるように育てないといけないのです。小学校に入る前から、そんなことを考えないといけない? それが、子育ての基本であると分かっておくと、子供のことで悩んだ時に、おのずとどうしたらいいか分かってきます。
これから、成長段階ごとに、詳しくお話ししていくことになりますが、まず、自立させるための子育てであることを、はっきりと親として自覚しましょう。
『芸生新聞』2018年6月4日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師