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コラム
児童期編その12「今の延長線上に、自立がある」
親子コミュニケーション

子育てのゴールは、20歳の成人式ではありません。通過点ではありますが、放っておいても、成人にはなれます。自立した大人にすることが、最終目的です。
高校を卒業して、一人暮らしをしながら働き始め、親の手がかからなくなったなら、その時点で、自立したことになるでしょう。
30歳前後で定職に就かず、ときどきバイトして、親と同居だからと、食べさせてもらえている生活なら、自立した大人とはいえません。「そんな先のことを、まだ小学生で考えられない」ですよね?
でも、そこを心して〈今の延長線上に、自立があるのだ〉と思うと、前項に書いた甘やかしをせず、手をかけることの必要性が分かってくるのです。
先生に怒られないために、〈お勉強ができてうらやましい〉と周りから思われるために、きちんとした生活をさせるのではありません。
〈ただただ我が子が、順風満帆に何事にも困らず、平穏無事にあればいい〉と願う子育てだけをしていては、自立した、打たれ強い人間にはなりません。
子供が困らないように、いやな思いをしないように、親が先回りして、いやなことから逃してやったり、よそにクレームを言ったりしていては、自分で乗り越える力が付かないのです。
うまくいかなかった時、我が子が乗り越えるのではなく、〈よその子供が、先生が、大人が間違っているから、その人たちの対応が変わらないといけないのだ〉と思う親は、後々、子供も親も困ることになります。
他の人のせいにしている親は、将来、自分で乗り越えられないことに直面した子供が、不平不満を親にぶつけ、親のせいにするでしょうから。親力とは、子供が自分の力で考え、判断し、困難を克服していける自立した大人に育てていくことなのです。
『芸生新聞』2020年8月10日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師