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コラム
児童期編その16「子供の〝できる〟を増やせる言葉掛けを」
親子コミュニケーション

小学1年生の時は、子供に細かく丁寧に話しかけていても、学年が上がっていき、親も学校生活に慣れてくると、〈できて当然〉の思いから、「ちゃんとしなさい」「整理整頓しなきゃだめよ」「調子に乗らないの」「忘れ物をしないように」。こんなことを、よく言っていませんか?
まず認識してほしいのは、このいずれも効果のある言い方ではないということです。どうすることが〝ちゃんと〟することなのでしょうか。
整理整頓された状態が子供に分かっているのかな? 調子に乗っているように見えるからといって、何がどう行きすぎているのか伝わっている? 忘れ物は、気が付かないから忘れ物。忘れないようにする方法があるはずでしょう?
言葉の意味が分かってきた辺りから、親は抽象的な言葉をよく使うようになります。でもそれでほんとうに、子供は分かっているのでしょうか。
「電車の中では、走ったり大きな声を出したりしない」「鉛筆はペン立てに立てよう」「本は本箱に戻そうね」「人の話は最後まで聞こう」「給食セット、水筒、ハンカチ、ティッシュを持っている?」と言えば、分かりやすいですね。子供ができていないのは、親の言い方では改める方法が分かってないからかもしれません。
具体的に伝えるようにすると、できるようになっていきます。ただし、いっぺんにあれもこれも言われたら、いやになってしまいます。一つができるようになってから次のことを言いましょう。大人も「洗濯済んだ?」「掃除したの?」「ご飯まだ?」と、次々と言われるとうんざりでしょう。子供も同じです。親の言葉の掛け方次第で子供の〝できる〟が増えていくのです。
『芸生新聞』2020年12月7日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師