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コラム
児童期編その21「親は、最強で最適なハードル」
親子コミュニケーション
高学年になると、勉強やスポーツ、お稽古事などの内容が次第に難しくなっていったり、成績がなかなか思うように伸びなくなったりと、子供が壁にぶつかることが増えてきます。
「もう嫌だ、やめたい」と、言われることも出てくるでしょう。低学年のうちは、無理やりにでもさせたり、通わせたりすることができていても、高学年になると抵抗も大きく、親の思いどおりにはならなくなってきます。
そうすると、〈もういいか、やめさせても〉と、思えてくるものです。親にすれば悩みどころですが、悩むのは悪いことではありません。大いに悩んでいいのです。
〈小学校卒業までは続けさせよう〉と思ったら頑張らせたらいいですし、〈もう本人はいっぱいいっぱいだろうな〉と判断したら休憩させてもいいでしょう。ただ、心しておいてほしいのは子供にとって「親は、最強で最適なハードル」ということです。
つまり、子供が壁を乗り越えることができるかどうかの、ギリギリのところを設定できるのが親なのです。学校や習い事の先生は、昨今、ハードルが低くなりがちで、もしかしたら、ハードルを越えられたかもしれないのに、その前に降りるように勧めてしまうこともあります。
そのギリギリのハードルを子供の気持ちをよく聞いて越えさせていく、頑張らせるところに、子供の成長があるのです。楽に越えられるハードルばかりでは、力が付くはずがないのは親も同じです。親も自らを省みて、共々に「生きていく力を付ける」これが大切です。それができるのは、お母さん、お父さんなのですよ。
『芸生新聞』2021年6月7日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師