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思春期編その1「親が中学生の時と今は違う」

親子コミュニケーション

 中学に進むと、親子共に、また新たなドキドキ生活の始まりです。授業科目が増えるし、部活は何に入るかな、先輩は優しいかな……。第1子の中学入学となれば、親はなおさら、自分の中学時代の思い出が懐かしく重なったりします。

 ただ、以前にも書きましたが、親は自分の中学時代と同じように思ってはいけません。ネットもパソコンもスマートフォンもない時代の中学生と、分からないことは何でも数秒で分かる現代の中学生が同じはずはないのです。

 友達との約束一つとっても、昔とは違います。携帯がない時代は、遊びに行くための待ち合わせは「いつ何時に、どの駅のどの場所で」と、細かく決めるのが当たり前でした。今は「じゃあ日曜日の10時、〇〇ね」でおしまいです。そしてその日に「今どこ?」。それで何とかなるのです。

 数人で集まるにしても、コミュニケーションアプリなどを使って「今、〇〇にいます」で済むけれど、携帯のない時代は、「誰か自宅の電話番号分かる?」と、アドレス帳を出して、公衆電話で自宅にかけておうちの人に聞いてみる、それでも連絡がつかない時は、駅の伝言板(どこの駅にも、黒板とチョークがあり、誰でも書き込めるようになっていました)に、「先に行くね。△△(名前)より10:15AM」などと書いたものでした。約束の時間には遅れないようにとか、会えなかった場合を想定して、あらゆることを考えるのが当たり前だったのです。

 親の世代は、夏休みの自由研究に、何をするか悩んだ覚えがあるでしょう。今は、ネットで探して「どれにする?」と、できそうなものを選ぶので、悩むことは少なくなりました。それだけでも大きく違うことがお分かりでしょう。

 今の中学生は、親の時代ほど、〈どうしよう〉と思うこと、困ったことに出合っておらず、問題に対応する力も、親が思うほどではないのです。悩みを抱えることが親の時代より少ないために対応力が弱いのです。

 友達とケンカして、一晩悩んで、翌日、恐る恐る話し掛けたり、謝ったりしなくても、夜中であろうが、メールやコミュニケーションアプリで「さっきはごめんね」「いいよ」と、一発解決(したかのように)できてしまうのです。

 かつては友達との電話も、親の目を気にしながら、怒られないように、気を使いながら自宅の固定電話でかけたものでした。そういった経験を積んで、良くも悪くも、知恵を働かせてきた中学生と、今の中学生が同じはずはありません。〈自分が中学生の時はこのくらいできた〉と思うことはやめましょう。「昔は洗濯機がなくて、洗濯物は全て手洗いしたものよ」と言われても、ピンとこないのと同じなのです。

『芸生新聞』2021年11月1日付号掲載

臨床心理士の考える子育てのヒント

1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。

川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師

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