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コラム
思春期編その2「子供の様子をしっかりとうかがい、声を掛けて」
「中学生になったのだから」と、期待と不安の中で頑張ろうとする子は多いものです。その様子を見ている親は、〈慣れてきたので、もう大丈夫だろう〉と思うのですが、やがて緊張感が薄れ、勉強や部活に疲れてくると、入学当初や1学期にはできていたことが、いいかげんになってしまうことがあります。
前夜に明日の用意をしなくなったり、お弁当箱や給食セット(箸やスプーン)の出し忘れが続いたりすると「何度も言ってるのに、なぜできないの!」と、怒りたくなります。
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それは小学生の頃よりも、中学に入るとしなければいけないことがいっぱい増えて、できなくなってしまうからです。科目が増え、それに伴う持ち物(ワークブックや資料集など)も増え、更には委員会活動、部活動、生活全般にもと、気を回さないといけないことが増えます。
最初はゆっくりと丁寧に説明されていた連絡事項や授業も、次第にそうではなくなります。〈1年生のうちはできていたのに、2年生になってからいいかげんになった〉とか、〈徐々にできなくなってきた〉ということになるのです。
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学年が上がるにつれ、することが増えても、どこでキャパシティーがオーバーするかは子供によって異なります。子供の手に負えなくなってきているような時は、もう一度、できるようになるまで親が手をかけてあげてください。怒るのではなく、全て代わりにしてあげるでもなく、子供の様子をしっかりとうかがい、〈今のタイミングなら明日の用意ができるかな〉〈給食セットを出せるかな〉と、親自身が考えて、声を掛けましょう。
逆にキャパシティーがあるのに、反抗心からやりたがらない子もいるでしょう。それでも、〈今、この子がどんな状態なのか〉をきちんと判断して声を掛け、できるようになるように促すことが、親力なのです。
『芸生新聞』2021年12月6日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師