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コラム
思春期編その6「親の尺度で子を測らない」
親子コミュニケーション
親の時代と今の時代とでは、大きく環境が違うので、同じように考えてはいけないと、何度も書きました。それでも子供が中学に上がれば、親にとっては、自分の中学時代の生活と重なり、どうしてもその経験が基準になりがちです。
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かつての学校には怖い先生が1人くらいはいました。場合によっては、指導のために手を上げる人も。今の時代に、そんな先生はいません。遅刻して宿題を忘れて怒鳴られる、なんて珍しいことです。親の時代とは学校環境が全く違うのですから、〈私ができていたのだから、わが子もできて当たり前〉と思わないようにしましょう。
「私はちゃんと中学校の規則を守っていたし、提出物もきちんと出していたのに、どうしてあなたはできないの⁉︎」と言っても、意味はありません。自分の過去の行動を基準にした尺度で子供は測れないのです。環境が違う上に、違う人格なのです。何より、自分自身が中学生の頃、本心では規則も嫌だったし、提出物も面倒くさかったのなら、子供が同じように考えても文句は言えません。
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小学生までは、ほぼ親の考えや基準を元に、子供をしつけることが当然だったのに、中高生になってくると、そうはいかなくなります。ちょっと振り返ってみてください。かつての自分の本心を棚に上げて、形だけを子供に押し付けていませんか?
〈それでも私はできたのだから、できて当たり前〉ではなく、〈この子ができるようになるには、私がどう言えば、どう動けばいいのか〉と考えることで、子供を成長させる道が見つかるのです。
『芸生新聞』2022年4月4日付号掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師