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思春期編その8「子供の心を受け止めて、サラリと流す」

親子コミュニケーション

 最近は、めっきりガキ大将タイプの子が減りましたが、逆に学校では、手のかかる子が増えてきている印象を受けます。

 新しい環境になじめず、じっとイスに座っていられない、指示が聞けないなど〝小1プロブレム〟〝中1プロブレム〟といわれるような事象です。一方で、先生の言うことをちゃんと聞いて、宿題をきちっとこなし、提出物を期限どおりに出し、真面目で誰からも「いい子ね」「できた子ね」と、言われるような子もいます。

 しかし、そういう子が、中学または高校に入ってから、突然、学校に行けなくなることがあるのです。

 初めは〈疲れが出たのかな〉〈頑張り過ぎてたからかな〉と様子を見て、1日2日ほど休ませていても、また繰り返すようになり、次第に、朝起きられず、全く登校できなくなってしまうケースがあります。

 一概にはいえませんが、こうした真面目な、何事も完璧にしたいタイプの子供は、周囲から失敗が許されないよう育てられてきたために、何かがうまくいかなくなると、そんな自分を受け入れられず〈できない自分はダメなんだ〉と思ってしまい、エネルギー切れを起こすことが多いと思います。

 中学、高校になると、当然、課題が増え、部活に行く、委員会活動や役員を引き受けるなど、背負う負荷が増えていきます。それまで完璧にこなしてきただけに、できないことがあることに不慣れで〈なんだそんなこと、できなくてもいいや〉と思えないのです。

 〈そこそこできているよ〉と周りが思っていても、本人にとっては〝ダメ〟なことで、それでは納得できないのです。

 真面目であることは大切ですが、何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」でいきましょう。度が過ぎるとバランスを崩します。〈完璧でないとダメ!〉〈こうしないとダメ!〉と思う傾向の強い子には、親自身が姿勢を改め、緩めていけるように、心掛けましょう。

 できないことにぶつかった時に、「頑張ればできる」のではなく、「できなくてもいいのよ」と言って笑ってあげることも大事です。

 焦らず穏やかに、〈できない!〉と思っている子供の心を受け止めて、サラリと流していけるように見守ってあげましょう。

 もちろん、不真面目でサボりたがる子には、その原因も親にあるので別の対応をしなくてはなりません。

『芸生新聞』2022年6月6日付掲載

臨床心理士の考える子育てのヒント

1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。

川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師

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