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コラム
思春期編その11「子供の能力に見合った志望校を冷静に判断して」

子供が幸せになる道を親が決め付けてレールに載せることについて、前回お話ししました。今回は、子供の意思、希望がはっきりと決まっている時の話をしましょう。
将来子供がなりたいものがあるなら、かなえてやりたいと思い、協力してやろうとするのが親心ですね。子供が「この高校、あの大学に入りた
い」と強く願っている時も同じでしょう。
では、それがあまりに無謀と思える希望、全く届くはずのないような高い偏差値の学校だったらどうでしょう?
子供なりに努力もできると考えて志望した学校です。「そんな所行けるわけないじゃない!」と頭から否定するのではなく、応援し見守っていきたいものです。
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ただ、「じゃあ頑張りなさい、塾代も出すし、勉強アプリも問題集も買ってあげる」となったところでやる気が出るかというと、肝心の本人があまり勉強しない、ゲームやSNSに夢中。「勉強したら?」と言うと「言われたからやる気なくした」と返してくることだってあるわけです。
それでいて「あなたが志望校に行きたいって言ったんでしょう! それなら好きにしなさい」と放っておくと、散々ゆっくりした後、深夜に勉強を始めて、翌朝起きられない……。そうなると「もう勝手にしなさい!」と言いたくもなります。
しかし、そこが大事です。子供から行きたいと言ったその言葉尻をつかまえて突き放しても、やる気は生まれてきません。子供のせいにしても、何の進展もありません。
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いずれ志望校決定時期には、子供や教員と相談しながら、ふさわしい学校を絞っていかなければなりません。
親がこれまで生きてきた人生の全て、子供と接し、育ててきた全てが凝縮されて今があります。
志望校に見合った能力にまで引き上げるには、子供がどうすれば良いか、親である自分がどう変われば良いか、冷静に判断し行動し、応援していける大人な親の目線を持ちましょう。
『芸生新聞』2022年9月12日付掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師