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コラム
思春期編その15「適度な距離を持って見守ること」
これまで思春期の悩みについて、それは「よくあることだ」と説明してきました。では、具体的にどんな悩みがあるのかというと、「自分に自信が持てない」「友達と話していても表面的で、本当の友達といえる人がいない」「グループで話している輪の中に入れない」「友達の前で笑っている自分が、本当の自分とは思えない」「頑張っても無駄だと思う」「思うようにできない自分にイラつく」「親がウザい。親の言うことに、とにかくイライラする」などです。
親自身が中高生の頃に、〈私もそう思ったなあ〉と共感できるものや、逆に〈そうは思わなかったけれど……〉と感じてしまうものもあるでしょう。百人百様の思いがあって当然なのです。
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「自我の目覚め」といったりもします。小学生の頃、あまり考えずに楽しく遊べていたのは、まだ自分自身のことについて深く考える力が未熟だったからです。大人になるまでに〈自分はどんな人間なのか、周りからどう見られているのか〉と考え始め、悩み出すのが思春期なのです。
結局のところ、〈悩んでも自分は自分!〉〈まぁ、これでいくしかないか〉とか、〈仕方ないわ、これが自分だもの〉と自分で納得できるようになるまでには、少し時間がかかります。
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それを、親がオロオロと過剰な心配をしてしまうと、〈こんなに心配されてる自分はおかしいんじゃないか〉と、ますます子供の心は揺れていきます。そうなると、不安という負のループに入ってしまい、余計に抜け出せなくなります。
適度な距離を持って見守ることは難しいのですが、親が子供との距離を調整しながら、見守れるようにしていくことが大切です。とにかく口出しして「答えはこれよ!」と教えるのでもなく、ほったらかしにするのでもなく、親として悩みながらも、子供への接し方を見つけていってください。
『芸生新聞』2023年1月23日付掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師