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コラム
思春期編その16「少し距離を置いて見守る」
思春期の悩める時期に、親として何ができるでしょうか。小学生の時は、親の言うことをよく聞きますし、困ったことがあると、話してくることもよくあります。
しかし思春期になると、そうはいきません。「子供が中学生、高校生になり、あまり話をしてくれなくなった」「部活の朝の練習がきつそう」「休みがないけど大丈夫だろうか」「スマホばっかり触っていて、少しも勉強しない」「自分の機嫌が良い時は話してくるけど、学校や勉強のこととなると話してくれない」といった声をよく聞きます。
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「そろそろ勉強したら?」と声を掛けたら、「今しようと思っていたのに、そう言われたからやる気をなくした」、なんてやりとりはありませんか? こういう状態になったら、親は〈待つ時期に入ったんだ〉と思ってください。
放任ではなく、少し距離を置いて待つのです。必要な時には、子供から言ってくるでしょうし、言ってこないなら、そっと見守りましょう。
子供が学校に行かなかったり、部屋にこもったりして、「子供のSOSを見つけられなかった」と、ある親御さんに打ち明けられたことがあります。何でもかんでも親が察知して、そうならないようにできるわけはないのです。
特に高校生になると、親には学校生活のことはあまり分かりません。本人がやっていく力を付けるしかないのです。
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少なくとも学校に行き、課題をこなし、友達もいる。教師からも「特に気になることはないですよ」と言われるなら、むしろ、ありがたいことです。多少、親の言うことを聞いても聞かなくても良し。反抗的であってもなくても、家で進んで勉強をしてもしなくても良し。
〈今はそんな時期なんだろうな〉と、ありのままを見守る時期に来ていることを知っておいてください。
『芸生新聞』2023年2月6日付掲載
臨床心理士の考える子育てのヒント
1998年から中学校のスクールカウンセラーを始め、現在、兵庫県内の小・中・高で生徒、教師、親の相談を受けている。こころの悩み相談「コミュニケーションズサポート」代表。PL学園高等学校卒業。
川嵜由起美(かわさきゆきみ)臨床心理士・公認心理師